きもの探訪

常に変化しながら、結城紬の良さを次世代へ継承
産地問屋「奥順」・奥澤 順之さん

Part2「つむぎの館」

結城紬の歴史や高度な技術を伝えるために
博物館のような施設をオープン

「二千年の歴史を持ち、ユネスコの無形文化財にも指定されている結城紬ですが、商品をご覧いただくだけでは、その良さをなかなか理解していただけないことも多いんです。そこで、結城紬の歴史や高度な技術について、丁寧にわかりやすく紹介した博物館のような施設をつくろうと考えたんです」と奥澤さん。
2006年にオープンした『つむぎの館』は、全部で9つの施設で構成されている。奥順の店舗、離れ、土蔵以外の施設は、中に入って見学・体験できる画期的な総合ミュージアムだ。この『つむぎの館』を、奥澤さんに案内していただいた。

NHK朝の連続テレビ小説
『鳩子の海』の舞台になったのがきっかけ

この中でいち早く1977年に開館したのが、資料館〈手緒里(ており)④=上図参照〉。結城紬に関する豊富な資料、貴重な文献、実際に使われている道具、明治期から現代にいたる希少な結城紬などを展示した、結城紬の歴史を伝える日本でただ一つの本場結城紬染織資料館である(資料館のみ見学料が必要:大人200円、学生100円)。
「1974年に放映された『鳩子の海』の主人公が、紬織の修業をする産地問屋のモデルになったのが奥順だったんです。

それで、結城紬について知りたいという方がたくさん来られたので、説明できる場所をつくろうと思ったのがきっかけでした」
当時、個人で所蔵している古い資料などが家を新築するときに捨てられたりしていたため、それらを収集しなければという使命感も働いて「古文書をもらったり借りたりして、大勢の方に協力していただいて」急いで建てたそうだ。

1886年(明治19年)建造の離れ⑦
『鳩子の海』の舞台のモデルとなった座敷で、現在も問屋間の商談などに使用されている。

機織りや草木染めに挑戦!
ショップには結城紬のショールや小物も

その後、創業100周年記念で開設した体験工房やショップなどを合わせて、2006年にオープンしたのが『つむぎの館』である。
真綿糸を使った機織りでコースターを織ったり、藍染めなどの草木染め体験ができる染織工房〈織場館(おりばかん)③〉は、来館者に人気が高い。「見るだけではなく、実際に自分の手で織ったり染めたりすることで、もっと結城紬を好きになってもらえたら」と奥澤さん。

お土産を探すのにもうってつけなのが、ショップ〈結の見世(ゆいのみせ)②〉。店内には結城紬のショールをはじめ、結城紬で作ったオリジナル小物が色とりどりに並ぶ。きものはもちろん、洋服とのコーディネートにも使えるショールは、これからの季節に活躍しそう。「こうした小物を手に取ることで、普段きものを着ない方にも結城紬の良さを知っていただければと思います」

落ち着いた古民家に結城紬がずらり
カフェでゆっくりお茶も楽しんで

一歩足を踏み入れると、落ち着いた、どこか懐かしい空間が広がる〈陳列館①〉。約160年前の古民家をまるごと移築した風情ある佇まいの館内には、常時200点以上の結城紬が展示されていて、直接触れたり、風合いを楽しむことができる。
「生糸からつくる絹織物と違って、真綿糸で織られた結城紬は素朴な味わいがあります。柄も亀甲や十字絣などシンプルなものが多いので、帯、帯揚げ、帯締めなどの組み合わせで自分らしさを表現したり、コーディネートの妙で魅せることができるんです」

2004年には、明治初期に建てられた見世蔵を改装してギャラリー&カフェ〈壱の蔵(いちのくら)⑤〉をオープンした。
店内に展示された結城紬や芸術品を眺めながら、おいしい珈琲やお抹茶を楽しめて、予約をすればお弁当も用意してくれる。
「見てまわる場所がたくさんあるので、お休みいただくスペースも必要だと思ってカフェをご用意しました。先日はスコットランドの方がお見えになったり、国内外からたくさんの方々に足を運んでいただいております。機会があればぜひ、皆さまも『つむぎの館』で、結城紬を見て、触って、織って、おくつろぎください」


奥澤順之 (おくざわ よりゆき)

1982年生まれ。奥順株式会社・奥澤 順の長男として生まれる。
2007年私立玉川学園大学 卒業(在籍中イギリスに1年間留学)後、株式会社NAGAE入社。店長代理として店舗運営、得意先営業、瀬戸の工場にて生産管理責任者を経験し、営業ではザ・リッツ・カールトン東京の客室食器のリニューアルを担当する。2010年 修業のため青山に店舗を構える呉服店、有限会社ゑり華に一年間勤務。2011年 奥順株式会社入社。1年間会社の各部署にて研修を受け、現在は営業として精力的に活動中。2013年 同社代表取締役専務に就任。

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